ツグミがいた
ツグミがいた
昨日の公園に
今朝は神社で
ツグミを見た
今は部屋の窓から
風に揺れる二月の電線に
ツグミのふらここゆらり
電線ゆらり
カーテンを
シャッと開くと
鳥の影が飛び立った
※ふらここ…ブランコのこと
仰向けに目を閉じた私の上を
大きな雲が動いて行った
そんな気がした
ガソリンスタンドは壊して
珈琲屋ができた
一軒隣の家は
独り暮らしのお婆さんが亡くなり
親戚は家を壊して更地にした
お婆さんは私なんかより
やたら元気な人だった
いつか花火大会の時に鍵を落としたら探してくれたっけ
目をあけると
やはり大きな雲が私の真上を過ぎてゆく
わたしに影を投げかけて
幸せは誰かが持ってきてくれると
思っていた
そうでも無いのかな
都会にでてきたけど
うまい言葉も出なくて
話ははずまない
彼氏ひとり見つからない
面倒で触れないところに
ほこりが溜まり
どこからか掃除の達人が
来てくれるのを
待っているけれど
なかなか現れない
仕方なく掃除を始めた
雑誌の山を束ねて紐で結び
ほこりを掃い
片付けて雑巾をかけた
掃除が終わる頃には
気持ちがさっぱりした
ドラマみたいに出逢うことは
ほとんど無いし
幸せ配達人はしばらく
私の部屋のドアを
ノックすることを忘れている
鶏のトサカの色の自転車を買った
鶏がコオケエーコオコオと鳴くと
自転車は喜んで夜明けの海まで
走りたくなった
鶏が空を見上げて
飛びたそうにしていると
自転車は空まで走ろうと決めた
青ざめた私は叫んでいた
顔は笑っていたが
本当は叫んでいた
ムンクの絵をみた
なんだか自分が
バカバカしくなって
これからは笑わないことにした
叫んでいるのは私
青ざめているのは私
「バイキング」
テレビでは山のたべものが無くて町に下りてきた熊が
人にケガをさせて銃で撃たれたニュースがながれている
見知らぬおじさんが
「こんにちは」
と挨拶をした
みるからに熊だ
これは熊が化けているつもりらしい
大きな帽子をかぶりコートをきている
「おじさん、ちょっと待ってて」
家に帰り貯金箱を持ってくる
ぼくはおじさんをバイキングに招待したいと思う
ぼくが食べきれないくらいのご馳走を取ってきたら
「これ食べていいんか」
おじさんは泣いて喜び
「仲間にも食べさせたい」
と、一言
でも、ここはレストランだから、そういうことは出来ない
そして少し考えて
「僕が大きくなったら
コックさんになって
山にバイキングのお店を開いてあげるよ
それまで待っていてね」
熊おじさんはまた泣いた
顔中涙でべとべとになって
それでも食べている
「こころとからだ」
こころがいたいとき
からだもふるえ
なみだがこぼれる
からだがいたいとき
こころもちいさい
ためいきをつく
やさしいことばに
こころがよろこんでいる
からだがわらっている
ひとはいつかしぬけれど…
わたしのなかのちいさなへやに
すみついている
あなた
「オジサン88歳」
戦争でシベリアに行っていたんだ…
話し始めた色白のオジサンは
話し出すと言葉が
次々と出て、
よく分らなかったけど
笑った顔が少しかわいかった
「ぼくもふと」
ほら、今、あそこで
こぼれた言葉を拾っているのが詩人だよ
あんな必死になって
顔も服もどろんこだ
ぼくもふと
一緒にさがしてみようかと思う
服がよごれるから
靴がきたなくなるから
母さんは怒るかもしれないけれど
何かする時は決める時は
いつもひとりだもの
あ、子どもみたいに笑っている
風の音を聞きながら
強い風が吹き青空が高い
白い雲が速く速く駆ける
風の音を聞きながら君に電話をかける
電話の向こうに田舎の道が
どこまでも真っ直ぐ伸びる
電話に出た君の目の色が見える
少しなまった言葉が懐かしい
その一言が言えないで平行線を歩いている
君の長い髪が電話に触れたような
幸せの匂いがしたような
今日もまた発せられなかった言葉が
胸のあたりでうずいている
木犀の匂いのする夜空を星が流れる
ほらもう一つ
すれちがう時
生きることでいっぱいなんだ
目がかたる
あんたみたいに
明日の心配なんてしてる間なんかない
今しかないんだから
今お腹が悲しいくらい空いている
ぼんやりしてても
ご飯食べられる人は
いいね
そんなつぶやきが聞こえた
「すみません」
とあやまったけど
誰もいなかった
黒い雲をみた
湧いているのは
セピア色の内臓から
苦い唾液で描いた絵が
力強く黒雲になっていく
ああ、雨が降る
しんしんと沁みる輪郭
叫んでいるのに
大勢の人たちが
ひしめいているのに
誰もいない広場
賑やかなのに
なんて静かなんだ
少しづつ明けてゆく空に車を走らせる
入り口の池は凍り
氷の下に錦鯉のオレンジ色が脈打つ
動かない、耐えているのか
清めの水の柄杓は凍り
つららが下がっている
手をすすいでから少し飲む
新鮮な自分になれるだろうか
一攫千金の夢は無く
宝くじが当選したばかりに不幸になった人のことを思う
神様も飽きれるほどのちっぽけな願い
たぶんわたしは来年も変わらない
暑さがイメージを超えた日
白く丸い屋外テーブルで
ひとり
かき氷を食べる
他に客がいない
白いテーブルの上に氷が落ち緑色の
小さな水溜まりが
できる
直射日光が首筋を
ひりひり
帽子の中は
爆発する寸前
舌はヒンヤリしびれ
鼻がツンツン
その時
棒高跳びの選手が
高い白いバー
を超える
遠く祭り太鼓の
音がする
この上なく陽気に
なっている時
背中に
一本の黒い糸が
あり
遠くから
引っ張るやつ
がいる
楽しい時は
一瞬
だけど
永遠という
名でもある
ふつうのひとなんかいない
とおもうのに
ふつうでいい
とおもうおや
たぶんじぶんは
ふつうじゃない
いきかたをして
なぜ
こどもに
ふつうをのぞむのか
べんきょうはできないよりできたほうがいい
うんどうもとくいなほうがいい
おかねもできればあったほうがいい
あいまいさが
ふつうをのぞむ
たくさんのふつう
ありふれているわたし
ふつうのひとも
たにぞこにちかいところで
なやむ
友だちが
とうもろこしを
抱えてきた
きみどりのズボンが
両手の
とうもろこしを並べて置く
木が実を下ろしたように
(どうも留守ぎみになり、気楽に入れてみることにしました)
桜並木が土手に線をひいた
青空と土手と桜
青と緑と桃色の帯が
画用紙に定規で引いたようにのびる
家のなかのもぐらは気付かない
ただ風にのって
たのしそうで
うきうきするような
淡い匂いをかぎつける
やってきたもぐらは眩しくて
目をぱちぱちさせて
土手のみごとな変身ぶりに言葉が出ない
ある意味こわいような気さえする
おしみなく美しいということ…
もぐらは
ブツブツひとりごとを言いながら目をとじる
自分の部屋にいたほうが落ち着くな
退屈だけれど…
暗い部屋で目を閉じれば
湧き上がる思いのようにときめく
また少しのぞいてみたいような
気がする…
眩しくて呼吸が
できなくなりそう
さくらの木
花びらが肩にひとひらついている
てのひらの会2008年5月
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